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Style

本当に必要なものって?──スローファッションの提案

This article is written by a student writer from the Her Campus at ICU (Japan) chapter.

クローゼットの前に立ってみて下さい。

今、そこにはどれだけの服がありますか?

こんな機会は滅多にないでしょうから、根気よくぜひ数えてみて下さい!

そのうち、あなたが気に入っている服はどれだけあるでしょう?

またまたそのうち、“あなた”が“本当に”気に入っている服はどれだけあるでしょう?

次はその中から、奥の方に眠っているいつどこで買ったか分からない服やここ数年あなたに纏ってもらう権利を与えられていない服を除いてみて下さい。

これで最後です。そのうち、あなたが5年もしくは10年後も(その時のあなたの年齢もしっかり想像して下さいね)着続けたいと思える服はどれだけあるでしょう?

 

でも、その服は本当にその時まで、今の素敵な状態のままで服としての機能を果たしてくれるでしょうか…

 

このたった数個の審査に敗れてしまった服はの多さに驚いているかもしれません。

その服たちを眺めて何を思うでしょうか。

それらの行先は?

 

なぜ私たちは、数ヶ月もしくは数日後にはこの審査に簡単に敗れてしまう哀れな服たちを自ら増やし続けてしまうのでしょう? 溢れるほどの服を持ちながら、なぜ永続的にあなたの愛を受けられる服たちはこんなにも少ないのでしょう?  

 

──そもそも服ってそんなに必要なのかしら?

私は小さい頃から、服が大好きでした。自ら6台くらいのミシンをガタガタ動かして作る子供服のブランドを持っていた母の影響が大きかったのだと思います。素敵な服は自分に自信をくれるし、特に、外面的なところにばかり影響されやすい幼い時には、私にとって服が“素敵な女の子”に近づくための近道でした。だから、幼き日の私はとにかく服がいっぱい欲しい!と思っていました。母は私のために、生地を買い、デザインを考え型紙を作り、1ミリのズレもないくらい丁寧に縫われた丈夫で可愛い子供服をたくさん作ってくれましたが、小中学生の頃になると、いわゆる“ファストファッション”と呼ばれる、安くて(その時は何が安くて何が高いのか考えもしていなかったように思いますが)、種類も豊富で、広告の中で海外のスキニーなモデルたちが優雅に宣伝しているような服を好むようになっていました。

 

“ファストファッション”

 

その意味やその言葉の裏側に隠された現実に対して無知だった私にとって、新しい服でどんどんいっぱいになっていくクローゼットは心を豊かにしてくれるなんとも素敵な存在でした。でもそれが、本当は私の心をどんどん貧しくしていて、私が目指すべき本当に“素敵な女の子”から私を遠ざけていた存在だったとやっと気づいたのは、高校生になった時でした。

 

縁あって環境とファッションについて学ぶ機会を多く持った私は、輝かしい幕に隠されたファッション産業の悲惨な現実や、大量生産大量消費主義社会の残酷な実態に大きなショックを受けましたが、何よりもショックだったのは、それらの状況を悪化させている原因の多くは無知で無関心な消費者たち、つまり自分自身だったということです。「そんなことは知らなかった」「そんなつもりはなかった」というような言葉の残酷さに気づいた瞬間でもありました。実際私は、本当にそんなこと知らなかったし、そんなつもりはありませんでした。確かに、私たちは日々、そんなつもりはなくても思いも寄らないようなことによって隣人を傷つけたり、逆に世界のどこか遠くの人々に苦しみを与えたり、母なる地球の恩を忘れて“彼女”を裏切るようなことをしてしまいます。そして、それは人間生活をしている以上仕方のないことかもしれません。私たちの周りは、本当に多くの“知らないこと”で溢れているのですから。(実際のところ、私たちはたったの一つだって“本当に知っていること”なんて無いんじゃないかな、と思っています。)

 

けれど一方で、シンプルなクエスチョン一つで、私たちは、無知を克服し、自分たちが否が応でも生み出してしまうそのネガティヴな影響を大きく減らすことだってできるのです。例えば、「この服は一体どこからきたの?」というように。

 

そして、服についてそんなシンプルなクエスチョンを自分に問い、調べ、自分なりの答えを考え、また新たな疑問が浮かんだら、調べて考える、、というようなサイクルを繰り返すうちに私は、最初に皆さんに問いかけたクエスチョンに至りました。

 

「そもそも服ってそんなに必要なのかしら?」

 

さっきの審査に幸運にも生き残った服たちを見てみて下さい。きっと、素敵な思い出が詰まっていたり、愛着のある服たちでしょう。私自信、結局今の自分のクローゼットの中は、母が作ってくれたものや古着、自分でリメイクしたものやちょっと高くても自分でお金を出して買ったもの、母からお下がりでもらったものがほとんどです。広告につられ、安いからという理由で何気なく買ってしまった服は、結局なんだか自分らしくないように感じてきて飽きてしまい、何より服自体がすぐ駄目になって、捨てるか、もしくは、少しはいい事をしたというような気分を得るために、その実態も知らぬまま店先にあるドネーションの回収ボックスに出してしまうのがオチです。(ドネーションの裏の現実が気になった人は、ぜひ調べて見て下さいね。)

 

結局のところ、手元に残るのは、質の良いもののような気がします。私がここで言う“質の良いもの”とは、単に高級でハイクラスなものという意味ではありません。作り手の愛が込められ、長く良い状態を保ってくれるものです。そして、そういった服には自然と愛着を感じられるものです。人に大事に長く使われてきたものは古くなるほどその魅力が増すように思います。そして私が思うに、その魅力は身につけている人のものにもなるのです。私にとって、いわゆるSNS映えする最先端の服を着たり、広告のモデルたちと同じようなある意味画一的な着こなしをしている人よりも、少ない服を自分らしく大事に長く楽しんでいる人の方が、ずっと魅力的に見えるのはそういう理由なのでしょう。本当に質の良いものは、確かにファストファッションに比べれば少し高いけれど、その分長く持ってくれるし、愛着もついて、その人をより魅力的に見せてくれるのであればむしろプラスのプラスくらいですよね。

 

と言うより、そもそもファストファッションが「安すぎ」なのであって、今私たちが「少し高いな」という感覚を持ってしまう、サスティナブルな質の良い服の値段が本来妥当なのです。本当に必要な服を吟味し、飽きたり駄目になったりしたらリメイクしてみたり修理に出したりして、一つ一つを大事に使用していれば、消費サイクルはずっとスローになるのだから、決してその値段が手に届かないなんてことにはならないはずだと私は思います。もし時間があったら、環境とファッションについての映画や記事をぜひ見てみて下さい。一枚数百円という値段の異常さに気づくはずです。

 

最近は、“サスティナブル”が一種の“流行り”のようになってきてしまって、つい「本当にそうなの?」と首をかしげたくなるようなサスティナブルを謳うファストファッションブランドが増えてきています。だからこそ、「サスティナブルだから安心!」といって今までと同じ量を買ってしまうのではなく、やはり自分が購入する絶対量を減らすということが重要だと思います。

 

いつか自分の子供にもあげたいなと思えるようなお気に入りの服に出会えれば、または自分の手でお気に入りの服にしてゆけば、そもそも服って私たちが思っている以上に必要でないのかもしれません。

 

「必要な時に必要な服があればそれで十分。もちろん、自分らしさや美意識は妥協せずに。」

 

ここまで偉そうに書いてきた私だって、完全なる環境アクティビストでは全くありません。誘惑に負けて、環境のことを考えたら本当はするべきでない行動をしてしまったり、逆にするべきことができなかったりしてしまうことはよくあります。環境に対する知識だってまだまだです。けれど、日常的に上の言葉を自分に言い聞かせて、気候変動や環境破壊の温床である物質主義からできるだけ抜け出し、自分の心をヘルシーに保てるように努力しています。

 

また、私は今回皆さんに環境アクティビストになってもらいたいと思ってこの記事を書いてているわけでもありません。環境問題、人権問題はとっても大きくて複雑なテーマなので、色んな意見を持った人がいると思います。環境活動をしている身としてはもちろん、行き過ぎてしまった環境破壊に一緒に立ち向かってくれる人がもっともっと増えてくれることを望んでいます。とはいえ、今までの生活様式を一新し急にグリーンな生活しようと思っても、現代の社会ではなかなか難しいですよね。我慢しすぎてしまったりして逆に息苦しくなってしまうなんてこともあるでしょう。色んなことを気にしすぎるあまり、好きだったファッションが楽しめなくなってしまっては本末転倒ですね。私は、あくまでも自分と自然の両方にとって負担のないことがポイントだと思います。

 

今日この記事を読んで、日々メディアやSNSから受けるファッションの輝かしさ以外の側面にも興味を持ったり、自分の身近な服と自分の知らない世界や人々との繋がりを意識したり、今までと少し違うファッションの捉え方を持って頂けたなら嬉しいです。

少ないものに満足し幸せを感じることのできる心のゆとりや豊かさこそが、あなただけのファッションを生み出し、あなただけの美しさや魅力を引き立たせる秘訣だと私は考えています。

 

もうそろそろ世界のスピードを緩めない?

それに、“ファスト”を“スロー”にするのって、きっとその逆よりもずっと簡単なはずよね?

こんな時期だからこそ、スピードダウンすることで、“本当に必要なもの”が見えてくるかもしれませんね。

 

次回の記事では、こういった環境問題に対して、新しいファッションビジネスを行おうと積極的にアプローチしているICU生に、りさがインタビューした内容を紹介します!Don’t miss it!

Maasa Yamamoto

ICU (Japan) '24

I'm currently studying at International Christian University, majoring philosophy and religion. I simply love watching, creating, feeling, and listening to something artistic, and being in nature. And my biggest dream is living in Italy someday!
Sarah Ishikawa

ICU (Japan) '21

Sarah Ishikawa is currently serving as Editor in Chief and Campus Correspondent for Her Campus at ICU Japan. She is a senior studying English and American literature. On her days off you'll probably find her at a museum, coffee shop, or just at home getting things done.